「店長は、彼女がどんな風になって欲しいのかな？」
遅刻常習犯Ｓさんが、「更生」し、やる気満々で仕事に励むようになって1ヶ月。マネジャーは、店長が、きちんとスタッフを承認し、伴走しながらトレーニングをしていることを確認していました。もちろん店長得意のフィードバックもＳさんに上手くマッチするようになってきました。自分の責任感に気づいていない段階では、フィードバックの効果は、あまり高くありません。問題点に気がついても、責任を回避するからです。
しかし、マネジャーによって責任感を引き出されたＳさんは、もうガミガミ叱らなくても大丈夫です。ポジティブなフィードバックが彼女を更に前向きにしていきます。
Ｓさんの責任感が上昇するにつれ、彼女と仲間のスタッフとの関係も更に良くなっていきました。もともと、キャラクター自体は嫌みの無い明るい人柄でしたので、仲間からは好かれていました。遅刻にしても結局は許してしまっていたので、大きなもめ事にはなっていませんでした。
さて、そんな調子の上がってきた店舗を見てマネジャーは店長に尋ねました。
「店長は、彼女がどんな風になって欲しいのかな？」
店長は、ちょっと答えに悩みましたが、
「彼女には、いつも明るく元気に接客して、朝から夕方までのこのお店の顔になって欲しいですね。そして、その上で、昼の部のリーダーになってくれると嬉しいですね。」
と答えました。
「そうだね。Ｓさんは、自分でもそう言う状態を目指していたのですよね。」
「はい、そうです。」
「では、店長は、その気持ちをＳさんにどう伝えていますか？」
「？？？」
店長が答えに詰まるのも無理はありませんでした。
「明るく元気に仕事をして、みんなから頼られる存在になる」
これは、アルバイトであるＳさん自身が自分で宣言して目指している目標。
店長も、それはよく理解していました。
しかし、常日頃から、店長自身も彼女にそうあって欲しいという『期待』は伝えてはいなかったのです。
「お互いに分かっている事なので、伝えなくても私の期待は知っていると思っていました・・・」
「店長は、マネジャーの私が、店長にどの様な期待をしているかはご存じですか？」
「はい、いつも面談やメールで、エリアのリーダーになって欲しいという期待を伝えていただいています。あ！！」
「何かわかりましたか？」
「私はマネジャーがいつもいつも、期待して下さっている気持ちを聴いています。だから、わかっているんだと思います。
マネジャーがこのエリアの担当として着任されたときに、私に言って下さった言葉『店長は、きっとこの会社で一番のキラキラ店長になる』と言う期待を込めたお言葉を忘れることが出来ません。それだけではなく、メールや面談でも必ず『期待しているよ』と言う言葉を掛けて下さっています。」
「そうね、現に期待しているものね。」
「でも、私は同じようにスタッフ、特に一番期待しているＳさんにそのことを伝えてはいませんでした。」
「あら、もったいない(笑)」
自分の責任感に気がついて、前向きに走り始めたスタッフ、部下をゴールまで導くのが店長、上司の役目です。
しかし、一度走り始めたからと言って、最後まで順調に行くとは限りません。だから、伴走が必要なのです。伴走では、必要なスキルを向上させるためのトレーニングだけではモチベーションは維持できません。
励ますこと、期待していることをいつも明確にはっきりと伝えるのです。
「でも、『期待』を伝えるだけじゃあダメなんですよ。」
さて、他に何が必要なのでしょうか？
次回に続きます。
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