「ずっと『承認』を習慣にしていたからでしょうか・・・なぜか、以前よりも『誉める・・・称賛する』に抵抗や躊躇が無いんです。以前は、誉めようかどうしようかって考えて、結局何もしないことが多かったので、自分の変化に驚いているんです」
若き店長は、出来る店長のレクチャーのお陰で、自分の中にあった「誉めること」への抵抗感や躊躇する気持ちがすっかり無くなってしまったと、師匠である出来る店長に報告しました。
「それは良いことだね。習慣とは、それを無識に出来る様になることだからね。意識して『承認』を続けていると、やがてそれがあたりまえになる。意識して『誉める』を続けていると、それもやがて習慣になる。『おはよう』と『いいね』が一緒になってくるよね」
「そうなんです。特に感じるのは、以前は、スタッフひとりひとりの課題や目標やまたその変化をしっかり観察することなんてやっていなかったんです。うちの店のスタッフって全部で30人くらいいますから、忙しい自分はそんなことやってられないと思っていたんです。でも、それは間違っていたんです」
「なるほどね。間違っていたんだね」
「はい、なかなか徹底出来なかった細かいルールも、私自身がスタッフひとりひとりのことをよく理解するようにすれば、それぞれの考えや理解度の違い、解釈の違い、想いの違いがわかるようになったんです。でも、実は店長って、そんなことまでしてはいけないと思っていたんです」
「え？何でなのかな？」
「店長は、自分の直属の部下である社員を通じてスタッフに指示をし、徹底させることだという考えにこだわっていたんです」
「まあ、幹部を育てるにはそれも大切だけどね」
「はい。でも、自分が把握も出来ていないのに、社員に任せて『全然徹底出来ていない』なんて悩んでいることがすごく無責任だと言う事に気がついたんです」
「まあ、30人程度の規模ならば、やった方が良いね。自分が出来る化出来ないかわからないことは、部下が出来なかったときに効果的なアドバイスも出来ないからね。それに、忙しいというのはただの言い訳だからね。前も言ったけれど、店長がスタッフひとりひとりとのコミュニケーションを通じて、全員を把握し、掌握していれば、忙しさの種類が変わるようになるんだよ」
「そうですよね。おかげで、クレームや、トラブルなどの後始末の仕事がすっかり影を潜めました」
「いいね～。ルールを決めて、それを部下に、指示命令をすれば、何でもうまく行くというのは、上司という立場が陥る最も大きな勘違いだからね。ルールというのは、スタッフ達が自分たちで基準を合わせるために、自分たちで作れるようになることが理想だからね。店長がルールを指示しているのは初歩の初歩だよね」
「はい、私はその初歩のレベルでドタバタしていました」
若き店長は、スタッフとのコミュニケーションレベルを高めて行くために出来る店長から学んだ「観る聴く問うスキル」によって、「リーダーがかかりやすい罠」にかかっていた自分に気がつくことが出来ました。
いくら自分自身が直属の部下に対して、「観る聴く問う」を使っていても、その直属の部下が、その下にいるスタッフ達にそれを使えるようになるわけではないのです。
直属の部下が、それを使えるようになするためには、まずは自分がスタッフ全員を把握し掌握してからなのです。
若き店長は、それを実感し、今それを徹底していこうと覚悟を決めたのでした。
「で、先輩に質問なんですが、先輩は、このスタッフが50人もいる大きな店で、スタッフのひとりひとりを把握するために、どんな工夫をしているのですか？」
「ふふふ、色々とたくさんしているよ。じゃあ、ひとつひとつ教えてあげよう」
明日に続く。
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