「まだまだあるんですね。じゃあ、ちょっとスタッフにも尋ねてみますね」
若き店長は、出来る店長が行っているスタッフひとりひとりの特徴や成長を具体的に把握しフォローするための工夫について、スタッフボードと名札を見つけました。
しかし、出来る店長は、まだ他にも工夫はあると言うのです。
そこで、出来る店長から許可を得た若き店長は、出来る店長の店舗スタッフにインタビューをすることにしたのです。
「こんにちは。〇〇店の店長をしている〇〇です。少しお話を聴かせてもらっても良いですか？」
「はい、おはようございます！大丈夫です。なんでしょうか？」
「実は、店長とスタッフ間のコミュニケーションをよくするための工夫で、この店でやっていて、他の店ではやっていない独自の工夫を探しているんだ。何か良いものがあったら教えてくれないかな？」
「え～、他の店のことはよくわかんないんですけど、他店にヘルプに言ったときにそこのスタッフさんと話をしていて、これは自分の店だけなんだ、と思った仕組みはありますよ」
「へえ～何かな？教えて～」
「LINEですね。どこの店でも親しいスタッフ間では、LINEのアカウントを教え合って普段から連絡は取ってるんですけど、うちの店は、店長や社員さんも入っているLINEグループがあるんです」
「LINEかあ～うちもやってるけど、何か違うのかな？」
「たぶん違うと思うんです。うちの店のLINEグループは、グループ内で仕事や個人的な悩みをどんどん話し合うんです。ほぼ全員参加です。店でも話すけど、家でも、学校でも電車の中でもほぼLINEしっぱなし(笑) で、そこに店長が参加するんです」
「え？店長も参加するの？」
「はい、もうガンガン参加します(笑) まあでも、ほとんど『へえ～』とか『はあ～』とかばかりで、聴き役なんですけどね。でも、面談だけで無く、LINEでも聴いてもらえるとスッキリすることがあるんです」
「そうなのか・・・僕はさすがにそこまでは出来ないな・・・シフトの調整連絡くらいかな・・・」
若き店長は、出来る店長がそこまでスタッフとコミュニケーションをとっていることにさすがに驚きを隠せませんでした。
そして、そのことを出来る店長に尋ねました。
「なんでそこまで出来るんですか？聞けば夜中や休みの日だってスタッフのLINEにまで参加してるらしいですね」
「まあね。これには賛否両論があると思うけどね。でも、やっぱり店長にとって一番の問題は、スタッフ間と僕とのコミュニケーションのずれなんだ。僕の全ての時間の中で、一番重要視しているのは、スタッフが真剣にお客様の方を向かなくなることを防ぐことなんだ。そうしないと、結局はクレームやトラブルや仲裁やトレーニングに時間を費やすことになる。そんなことに時間を費やすくらいなら、もっとスタッフとの時間を増やした方が、もっともっとイイ店になるし売上も利益も増える。そうすると、それをスタッフ達に還元出来るからね」
出来る店長がスタッフ達とのコミュニケーションに最も力を注ぐ理由は常に一貫しています。
24時間体制でスタッフ達とのコミュニケーションをとり続けるのも、その理由と目的は、全て同じなのです。
「大変だな・・・」
「いやあ～それほどでも無いよ。後始末ばかりしていたときに比べると大変さは半分以下さ。いや三分の一くらいかな～。むしろ、楽しさの方がどんどん増えているよ。もちろん売上もずっと増えているしね。良いことしかないね」
若き店長は、自分がいかに目先の対応ばかりに時間をとられているかを考え直しました。
確かにクレーム対応やトラブルの後始末に比べたら楽しさが全然違うことも理解出来ました。
しかし、それがなかなか出来ないのが現実なのです。
「迷ったら、楽しい方を選ぶ！そうするとこうなるのさ」
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