「先輩は、前に『目標とプロセスについて合意することが大切だ』と教えて下さいましたが、スタッフが『はい、わかりました』と言っているのに、合意した形でやってくれない時は、何が原因なのでしょうか？」
若き店長は、以前出来る店長から教わった「目標とプロセスの合意」について、自分の方法に問題があるように感じていたことを出来る店長に尋ねました。
「それって、本当に『合意』しているのかな？」
「していると思うんです。ゴールとそこまでどのようにして到達するかについて、お互いに話し合って細かく設定したんです」
「最後はどのように合意したのかな？」
「はい、ずいぶん話し合った自信があったので『この内容で大丈夫ですか？』と聴き、スタッフは『ハイ、大丈夫です』と答えてくれました」
「なるほどね。ところで、『大丈夫』の定義は合意しているかい？」
「え？大丈夫は大丈夫でしょ？」
「そうかな？君の大丈夫とスタッフの大丈夫が同じとは限らないよ」
「確かに、言葉の定義を合わせることが大切であることは以前にも教えていただきましたけど、いくら何でも大丈夫は大丈夫で同じでしょう」
「君は、彼がどれくらい理解しているかをゴールまでずっと確認し続けているかい？」
「い、いえ・・・大丈夫だと言われたので、後は任せているんですが・・・合意した後でごちゃごちゃ言われるのはいやでしょうし。もちろん、放置しているわけではなく、1週間くらいしてから『あれ、大丈夫？』とは聴いているんです。その時も『大丈夫です』とは答えてくれるんです」
「合意をしたら任せるというのはとても良いことだね。でも、最初は、合意内容の確認のためのフォローアップをしっかりやり続けないと、今君が感じているような不信感が生まれてしまうんだよ」
「はい、確かに、今度は任せるのが恐くなりました」
「君とスタッフとは、まだお互いに『合意の信頼関係』が確立していないんだ。よく店長達は、『任せないと育たない』というよね。それは正しいんだけれど、それだけでは、ただの放任、丸投げと何も変わらないんだ」
「だから『合意』の基準合わせが必要なんですね」
「いくら十分過ぎるほど話し合ったとしても、スタッフはまだ、その方法でゴールに達したことが無いんだから、フォローはしなくてはならない。スタート時点で再確認をしたら、3日後、1週間後に『大丈夫か？』ではなく、プラン通りにスタートできているか？出足は自分の想定通りか？何か障害は無いか？優先順位はどうか？と確認をしなくてはならない。特に上司にとっての優先順位と作業量と難易度、部下にとっての優先順位と作業量と難易度は、全く違うことがほとんどなんだ。得手不得手も違うしね」
「か、かなり面倒なんですね」
「最初はね。完全に任せることが出来る様になるまでは、むしろ上司がやってしまった方が早くて楽なんだよ。だから、ここで、どのように部下を見ているかで上司の力量に違いが出てくるんだ！」
１）上司は部下の力量を正確に判断する方法を持つ
２）「任せる」ことが出来までは上司がやった方が早いことを認識した上で任せる
３）「任せる」の最初の段階は伴走が必要
４）部下の優先順位とペースを混乱させるのはいつも上司であることを理解する
５）「任せる」ことができるようになっても「フォローアップ」は怠らない
「自分基準で部下の力量や状況を判断する上司が多いからね。もっと部下の得手不得手や事情、性格などを理解した上で、細かいフォローアップをしなくては部下は育たないよ」
「わかりました。もう一度スタッフがゴールと方法について、どのように理解し、どのような状況にあるのかを確認します。信頼できなくなっているのは自分のせいなんですものね」
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