「Ｓさんは、みんなからどんな人って言われたい？」
「明るくて元気で、、、私がいると楽しくなる。そう言われたいです。」
「それ、いいね！きっとなると思うよ！じゃあ、今はどう言われている？」
「遅刻常習犯・・・私と同じシフトの人にはいつも迷惑掛けているから・・・」
Ｓさんは、確かに遅刻の常習犯。朝一番のシフトに入ることが多いので、彼女がシフト表にスケジューリングされていると、同じ時間帯に入っているメンバーに緊張が走ります。彼女は、2回に1回は必ず遅刻します。ほとんどが寝坊です。せっかく起きてもトイレで再び寝てしまうなんて事もあります。
そんな彼女ですが、朝一番のシフトに入ることの出来るフリーターは彼女だけ。遅刻の度に叱られながらも、結局彼女の頼るしか無いのです。
店長は何度も叱りました。同じシフトのメンバーもいつも文句を言っています。けれど、彼女はそれが改善できません。彼女もその場では反省します。明日はちゃんと来ます、と言うのです。でも、遅刻します。
アルバイトがたくさんいて、シフト作成の余裕のある店ならば、彼女はもう使われなくなっているかも知れません。しかし、この店のスタッフ充足は、そこまでは余裕はありませんでした。特に早朝はスタッフ数不足で困っていました。Ｓさんも、申し訳ないとは思いながらも、未だ甘えがあったのかも知れません。だってクビにはならないんですから。
そんな困ったちゃんのアルバイトＳさんの話しを聞いた新任マネジャーは、店長と一緒に個人面談をすることにしました。そこでの会話が、冒頭の会話でした。
実は、この面談は、こういう会話から始まりました。
「Ｓさん、おはよう。店長から話を聞いたんだけれど、『遅刻』よくするのね？」
「はい、もうしょっちゅうです。なかなか起きられないんです。」
「それでも、朝一番のシフトには入ってくれているんだ。」
「まあ、店長がそこにシフトして下さるし、お昼頃からは他の人もいるからですね。だから私は、朝一なんです。」
「いつも眠いのにありがとうね。」
「えへへ、でも、遅刻ばかりなので、帳消しですね」
ここで、マネジャーは冒頭の質問を行ったのです。
「ところで、Ｓさんは、みんなからどんな人って言われたい？」
「明るくて元気で、、、私がいると楽しくなる。そう言われたいです。」
「それ、いいね！きっとなると思うよ！じゃあ、今はどう言われている？」
「遅刻常習犯・・・私と同じシフトの人にはいつも迷惑掛けているから・・・」
「それ言われてどんな気持ち」
「イヤですよね。まあ、悪いのは自分なんですけれど・・・でも、なかなか起きられないのに、シフトに入れるから・・・」
彼女は、起きられない自分をシフトに入れる店長が悪いと言わんばかりの言い訳をしていました。
「でも、本当は、ちゃんとしたい。みんなに迷惑を掛けずに、むしろ頼りにされたい。彼女はそう思っている。」
新任マネジャーは、彼女のことをこのように信じ、彼女の心の表面を覆っている小さな無責任さを取り除き、彼女自身の中にある大きな責任感に気づかせようと思いました。
さて、続きはまた次回に。
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